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後藤道夫先生 | 南信州飯田おもしろ科学工房

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私の心を動かした科学の体験  その6
後藤道夫先生

「空前の世界記録を達成したはやぶさの地球スイングバイ」

2003年5月9日に鹿児島県内の浦から純国産の固体燃料ロケットMV-5で打上げられた少惑星探査機「はやぶさ」は
地球にそって1年間公転軌道を飛行した後、地球・はやぶさ・イトカワの公転軌道が交差する付近に来た時
「はやぶさ」は地球に近づき地球から受ける重力をエネルギー源としたスイングバイにより
速度を増し、方向も90度変えて、イトカワの軌道に飛び乗り、そのままイオンエンジンによって加速して
イトカワとのランデブーに見事成功したのである。
これは空前の世界記録と称賛された。
◎高率抜群のスイングバイ
このスイングバイは、1977年から1989年の12年間をかけて
米国の惑星探査機ボイジャー1号と2号により初めて使われた。 
ボイジャー2号は太陽系の4大惑星(木星・土星・天王星・海王星)との4回のスイングバイを利用して
太陽系のグランドツアを成功に導いたのである。
何らの燃料消費もなく、各惑星の軌道に飛び込んで、その惑星の大きな重力により強く引きつけられる力をエネルギー源として方向を変え、また加速するという至って効率的な方法である。
丁度4大惑星が一列に並んだ好機を狙って
図1のように、4回のスイングバイを使って広い太陽系のグランドツアを行って
イオの火山発見など、多くの貴重な観察を行ったのである。

図1
図1


もしスイングバイをしなかったならば多くの燃料を使うだけでなく
ツアーの期間も30年程かかるものと考えられていた。
「はやぶさ」も小惑星「イトカワ」の軌道に近づいたとき、地球に近づいて、地球とのスイングバイを行った。
その軌道に乗るためには極めて精密な位置と速度を制御する必要がある。
「はやぶさは」30km/秒の高速で、この大自然の重力パチンコに飛び乗るのである。
イオンエンジンを調整して、速度誤差1cm/秒以内という精密さで運転しなければならない。
それは「はやぶさ」が、1秒間に30km進んだとき、予定コースから1cmのずれもないようにすることで
それは甲子園で打ったホームランをバックスクリーンに映された0.1mmの的に当てるような難しさなのである。
相模原の宇宙研究所の調査室ではスタッフ全員がそのスイングバイの結果を心配しながら見守っていた。
突然スタッフ全員が大歓声をあげて喜びにわいた。

それは宇宙研究所が独自に開発したイオンエンジンを用いて
地球のスイングバイを成功させた世界一の日本の技術を証明した瞬間だったからである。
米国では同様に小惑星とランデブーのためにこうしたスイングバイをしているが不調に終り
小惑星と探査機はお互い高速ではしり去っている。
この至難のわざを見事に果した「はやぶさ」は更に高率の優れたイオンエンジンを数千時間にわたって噴射して
加速し、「イトカワ」とのランデブーに成功するのである。
私もこの重力パチンコとも言われる大変優れたアイデアであるスイングバイの原理を
子ども達に何とか理解させる方法はないかと考えてみた。
図2はこのスイングバイの原理を示す実験である。

図2
図2

長さ2m程のビニール袋レールを2本作り、その上に強力な小さい円筒状のネオジム磁石を置く
これは地球の重力の代りに磁力を代用させるためである。
二本のレールは角度30度程ひろげて交叉させる。
1本のレールは「はやぶさ」の軌道で、もう1本は「イトカワ」の軌道である。
レールの交点には重力の強い地球として1個の地球儀を置く。
レール上のネオジム磁石の左側には直径1cm程のベアリング鉄球3個を付着させ
もう1個は、ネオジム磁石の右側から少しははなれた位置から転がして磁石に当てる。
磁力で加速されたため、衝突した瞬間に、他端の3個の中の1個だけが高速で飛び出し
途中で進路を曲げて、「イトカワ」のレールに乗り移って走る。
まさに加速と方向変換を行うスイングバイの再現となる。
なおこの実験方法は、今年5月の「おいで館」恒例の「おもしろ科学大実験」に講師としておまねきした
東京の「ガリレオ工房」の理事長で、前東京大学特任教授の滝川洋二先生が、集まった数百人の子供達全員に
加速器の原理の実験として行い、おみやげにプレゼントして頂いたもので、大変不思議で面白いものである。
私がこのアイデアを利用して使った惑星のスイングバイの原理を示す実験装置は
いつでも「おいで館」に保管してあり、誰でも自由に使うことができますので
学校や地域社会での科学教育にぜひ役立たせて戴きたいものと願っております。



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